2025/01/10 21:22

世界初の化学繊維であるナイロン。
今ナイロンがない生活を想像できるでしょうか?
カバンからレイングッズから、スポーツウェア。さらには楽器の弦や釣り糸まで、どんな場面でも目にするナイロン。
一度ナイロンの製品が目に入ったら即帰宅の旅とかやってみてください。
最寄りの駅ぐらいで帰宅することになると思います。
それぐらい街を歩けば目にするナイロン。
世界で2番目に生産量が多いというからそれもそのはずですよね。
もともとナイロンは1939年に女性用ストッキングとしアメリカで販売されたのがきっかけで爆発的なヒットとなりました。

それまでのストッキングはずっと絹(シルク)が使われており、金額は高いし長持ちしないしで不満があったんですね。
そして第二次世界大戦に突入。これがさらにナイロンが人気になるきっかけとなりました。
軍事用としてナイロンはパラシュートの部品などに使われるようになり、戦争で大活躍。
これが「戦争にも耐えうるだけの繊維なら安心!」とさらに奥様方の心をつかみ、信頼のある生地へと価値観が変わっていったのです。
戦争が終わったあとも生活に必要なあらゆるものが安価に頑丈に作れるので、現代でもその人気がとどまることなく続いていきました。
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さて、タイトルにもある通り戦争とナイロンは切っても切り離せない関係にあるのですが、
実はナイロンの開発には日本がめちゃくちゃ影響しているということをご存じでしょうか。
前述したとおり、ナイロンが開発される前のストッキングは絹(シルク)が使われており高価だったのですが、
その絹糸を輸出していた国こそ日本なのです。
1930年代後半のアメリカでは世界の絹の5分の4を輸入しており、その90パーセントを日本が占めていたのです。
そしてアメリカのシルクの約75〜80%は女性用ストッキングに使われていたのです。

(出典:A.Davey from Portland, Oregon, EE UU - Separating Cocoons, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=61177610による)
ナイロンはアメリカのデュポン社が開発・発明したのですが、なんともマーケティングのうまいこと。
なんとなく「生地感が似ているからストッキングを作ろう」とかそういうわけではなく、
シルクの大幅なシェアを取っていた女性用ストッキングに変わるものを打ち出し、シルクの需要を大幅に下げ、自社製品に変えてシェア獲得。
しかも戦争相手である日本の強みを完全に潰すという完璧な戦略。
第二次世界大戦が始める寸前で完成させたのですから、すごいですよね。
これには日本は大打撃。
昔の論文に
「1936年のアメリカの対日輸入は総額1億7256万ドル。そのうち繊維が1億1946万ドル(69.2%)。さらに繊維の内訳をみると生糸が9497万ドル(総額の55.0%、繊維の79.5%)と圧倒的なシェアを占めていた。(参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshit/21/2/21_21/_pdf/-char/ja)」
とあるので、当時どれだけ大きな規模があったのかわかりますよね。
その後、絹を人造的に作ったレーヨンが台頭してくるため、さらに蚕から作られる絹の需要は減っていきました…
と、なるわけです。
この背景からわかるかと思いますが化学繊維は本当に、戦争と切っても切り離せない密接な関係があるなと改めて考えさせられます。
以上、戦争とナイロンでした。
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出典:
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/feature/0301/index3.shtml
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshit/21/2/21_21/_pdf/-char/ja
https://energy-democracy.jp/3943