2025/01/28 18:56

四分一って名前、パッと見ると算数の問題かと思いますよね。
この四分一(しぶいち)、実は日本独自の合金の名前なんです。
最初から合金の名前だってわかった方がいれば教えてください。このブログの執筆すべてお任せしたいので。

さてこの四分一。名前の通りのわかりやすい合金で「4分の1だけ混ぜましたよ」という金属。
朧銀(おぼろぎん)とも呼ばれる合金で、朧(おぼろ)げにぼうっとかすんだような状態の銀色の合金になります。
(鍛朧銀花器 たんおぼろぎんかき、田口寿恒)

この素材に関する最初の公式な記述は18世紀初頭の文章になるのですが、約400年前の江戸時代初期には使われ始めたのではないかと言われています。
似た構成の合金自体は他の国でも使用されていましたが日本刀の様々な金具の装飾に使われたり、経年変化を楽しむような使い方は日本以外ではほとんど知られていなかった素材。
しかもこの四分一は金属の中でも硬質で、しかももろいという、非常に扱いにくい地金なのでわざわざそんな金属を使おうなんて国がある方が不思議ですよね。
でもその独特な輝きは思わず見とれてしまいます。


四分一の多くは「木目金」と呼ばれる日本独自の金属工芸技術で使われることの多い素材です。
※木目金とは色の異なる金属を幾重にも重ね合わせたものを丹念に彫って鍛え美しい木目状の模様を作り出す技術。
この木目金を作るときに四分一(しぶいち)を普通の銀や銅と併せて使うことでより一層奥行きのある深い模様に変えていくのです。
(イメージ:木目金を使用した鍔)

日本古来の色味というのはどれも奥行きがあって、どこか鈍い光を放ちますよね。
谷崎潤一郎さんの陰翳礼讃(いんえいらいさん)にも書いてありますが日本は独自の色彩感覚があり、人の垢をまとったような、勾玉のような鈍い光を放つものに惹かれるとありますが、とてもよく分かります。
※あと余談ですが「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」は日本人なら絶対読んだ方がいいです。短いのでぜひ。

実際に四分一を販売しているオンラインショップがないのが残念ですが、いつか日本独自の合金を扱った製品が世界に存在感を出すようになったらいいなと感じますね。

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